※鉄道博物館公式Facebookにて2020年7月22日に投稿された内容となります。
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昭和30年代の常磐線を 舞台とした記録映画があります タイトルは「ある機関助士」
1963(昭和38)年、国鉄企画、岩波映画製作所制作による記録映画『ある機関助士』が制作されました。当時の国鉄は新型車両や業務内容を紹介するPR映画を数多く制作しており、この作品も当初は、前年に起こった三河島事故の影響から、国鉄が安全への取り組みを宣伝するために企画、制作されたものでしたが、その内容は、直接安全への取り組みをアピールするのではなく、時刻通り、かつ安全に急行列車を運転すべく奮闘する現役の機関士と機関助士を主役に据え、常磐線を舞台として、蒸気機関車乗務員の過酷な労働の描写を主軸に置いた、本格的なドキュメンタリー映画となりました。 作品では、気動車特急「はつかり」と並ぶ、当時の常磐線の看板列車だった急行「みちのく」の上野~水戸間に乗務する、機関士と機関助士の仕事ぶりを丹念に描いており、合わせて沿線の光景や、蒸気機関車乗務員の乗務ぶり、当時新たな安全対策として車両に設置された信号炎管を用いた列車停止の訓練の様子などを紹介しています。ハイライトとなるのは折り返しの上り乗務で、水戸で引き継いだ上り「みちのく」が、同駅発車時点で3分遅延しており、取手から先は国電区間の過密ダイヤとなり回復運転が不可能なため、取手到着までに3分の遅れを取り戻さなければならず、綿密な打ち合わせの元、徐々に遅れを回復していく二人の奮闘が繰り広げられます。定時運行の確保に全力を傾ける姿は、鉄道に生きる人々の矜持を感じさせます。 やがて消え行く運命にあった蒸気機関車を主な舞台としたこの作品は、国鉄が制作した記録映画の中でも秀逸な作品となり、第18回芸術文部大臣賞、教育映画祭一般教養映画最高賞を受賞するなど高い評価を受けました。趣味的に見ても国鉄最大の旅客機・C62形蒸気機関車が全力で走行するシーンなど、同機の魅力が余すところなく描かれ、キハ81形やキハ55形、EF80形など、当時の常磐線で活躍していた車両が次々に登場して飽きることがありません。動力近代化の進む国鉄での蒸気機関車の置かれた立場、そこで奮闘する乗務員の姿や、北海道連絡の主舞台として輝いていた時代の常磐線の姿を余すところなく記録し、今に伝える傑作と言えるでしょう。
写真:阿武隈川橋梁を渡る急行「みちのく」 1967(昭和42)年7月23日 撮影:早坂和義
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