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常磐線あれこれvol.10


※鉄道博物館公式Facebookにて2020年8月13日に投稿された内容となります。

※該当記事のリンクは下部に記載。


 

現在の常磐線は

日暮里から岩沼まで

81の駅があります。


 今回の企画展ではこの81駅のうち、当館で所蔵している71駅の駅名標を展示しています。これらの駅名標は、各駅のホーム上屋(屋根)の柱等に取り付けられていたもので、おおむね昭和30~50年代に使用されていたものです。ホーロー引きの鉄板に駅名が平仮名で記され、丸い柱に取り付けるためか、板面が湾曲したものもあります。


 文字の書体は、昭和戦前期以来の筆記体や、戦後の1954年に「国有鉄道掲示規程」が変更されて採用された“丸ゴシック体”、さらに、1960年に再度規程が変更されて採用された“スミ丸角ゴシック体”と3種類の書体が見られます。ホーローの配色も時期によって異なっており、1960年に群青地に白い文字とされ、1967年には黒地に白抜きまたは白地に黒抜きに変更されています。その後も1973年にコバルトブルーに白文字、1982年には再び群青地に白い文字に戻されと、何度も変更されました。またサイズについても1954年に何種類かのサイズが定められ、ここに展示する駅名標はヨコ15㎝×タテ75㎝の"9号型”と呼ばれるタイプとなっています。


 このように国鉄時代には、駅名標ひとつとっても厳格にルールが定められていました。ただ、ルールが変わったからといって、こうした掲示類を一斉に交換したわけではなく、劣化が進むごとに交換していたようで、同じ時期にさまざまなタイプのものが混在することになりました。さらに、これらの駅名標は字書きを専門とする職人が手書きで見本を書き、それをもとにして製作されているため、一枚一枚が実に味わい深い文字となっており、“昭和の香り”を感じさせる資料として見飽きることがありません。


 津波被害を受け、駅が流失した新地、坂元、山下の駅名標は旧駅時代のものであり、数少ない旧駅の“生き証人”ともいえる存在です。このたび運転が再開された区間も富岡、夜ノ森、双葉、浪江の駅名標があり、そのいずれもが書体や形状、下地の色が異なり、さまざまな時期のものが混在しています。


 これらの駅名標を通じて、昭和の時代、駅名標が使われていた頃の駅の姿が思い起こされ、1枚の駅名標から駅のさまざまな光景や思い出がよみがえってくるかのようです。個性豊かな駅名標は、過去の記憶を再生する装置なのかもしれません。


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